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おんな城主直虎 総評

次回大河の主役は女性……しかも、史料がほとんど残っていない人物だと聞いた時、私は「なぜだ?!」と思いました。

史料がほとんど残っていない女性主人公……花燃ゆで散々地獄を見たはずじゃないか! 

死兆星が燦然と輝いているのが見えるだろうっ!
 

それなのにどうして……人間は同じ過ちを繰り返す悲しい生き物なの?!

と、叫び出したくてしかたありませんでしたが、吉田松陰の妹・久坂の嫁である以外、ほぼ一般人でしかなかった美和と違い、今回の主役は、大国に囲まれた小国の領主。

「毛利元就」みたいな感じに大国同士のせめぎ合いによって起こる余波に翻弄される小国同士の駆け引きを描いていけば、そこそこ面白くなりそうだし(ご近所にはお田鶴の方という、直虎以外の「女城主」だっている)

今までの大河ではあまり描かれなかった今川家の視点も描けるし、 後半は手塩にかけて育て上げた直政に主役をシフトさせて、徳川家での活躍を描いていけば、尻すぼみすることなく、最後まで面白くいけるのでは?!

……なんて、期待していた時期が、私にもありました。

 




 まず、このドラマにおいて感心したところ。


・この脚本家さんは(私的に)独特な観点から歴史の勉強をしたなということ。
城主の内政についてのあれこれや、産業復興活動、徳政令を回避するための策だとか、これまでの大河ではあまり描いてこなかったことを描いていました(特に前半)
私は政治方面や戦方面のほうばかり目が行ってしまう性質なので、「へえ。そうなんだ」と感心することが結構ありました。
「おお!」と思うどんでん返しもぼちぼちありました。特に、ルリ子デスノートは秀逸。あれには痺れました。「徳川殿の好きにされよ」からの「わしも好きにするがの」という付け足しも、なかなかでしたねえ。

・鶴、寿桂尼、氏真、康政。滑り込みで海老長さま。この五人がよかった。
一人で大河オーラを作り出し、孫の呼びかけで何度も不死鳥のごとく蘇り、デスノートで「ルリ子、恐ろしい子!」と、私を身悶えさせた寿桂尼。この人こそ、まさに女城主でありました。

名家の重責に押し潰されそうになりながらも、必死こいて奔走し、今川家が没落してからは吹っ切れて、軽やかに戦国を生きた氏真。

寿桂尼&氏真の絆も、葛藤がありつつも微笑ましくてよかった。

あまり言及しませんでしたが、康政も地味によかった。武士らしい規律正しさ、佇まいとか。生真面目過ぎて損な性格とか、いい味出してました。

それから海老長さま。分かりやすい悪役に仕立てるため、大半、気に入らない者は誰彼かまわず殺す、血も涙もない基地外みたいな描き方をされていたし、喋ると「うん?」と思うんですけど、やはりあの佇まいとオーラはさすが。
あと、「本能寺が変」回で見せた、膳を運んできて、甲斐甲斐しく膳を整える様や、家康にプレゼントするための茶器を選んでるシーンは、ぶっちゃけ可愛過ぎた(爆)
もっとああいうおちゃめな一面が見たかったし、敦盛も見たかったなあ。。。

……で、何と言っても鶴ですよ!

スタッフは相当中の人が大好きで、どうすれば彼が最も映えるか熟知されているようで、彼を引き立てるため、あらゆる工夫を凝らしておりました。彼もその期待に応え、最大限の演技をしていました。
結果、主人公そっちのけで彼一人が燦然と輝くことに。

このドラマぶっちぎりの勝ち組は高橋一生。異論は認めない。


ということで、いいところもあるにはあるのですが、それ以外がなあ……ぶっちゃけ全滅です

・軽すぎる演出の数々。
今年もやっぱりなんですが……戦国時代感がまるでしない。
そりゃ、演者さんたちが戦国オーラを出したり、近年では珍しい生首とか出したり何だりしてはいましたが、全体的に登場人物の言動がとにかく戦国じゃない。

主筋の姫に「あの商人とできてんの?」「女風情が!」と公衆の面前で喚いても、御咎め一切なしとか、小姓が主君の部屋で(振りとはいえ)昼寝しても許されるだとか、とにかく目上の者に対しての礼節が皆無。
一部の俳優さんを除いて、皆所作が荒いし、言葉遣いも軽い。
ついでに、妙なコメディ&漫画風味な過剰演技をするものだから(特に万千代と方久)、評定の場が中学校運動部、もしくはヤンキーの言い争い的なノリで、非常に軽い。重厚感がない。
(万千代小姓描写なんて、まるでお局様たちにいびじられる新人OL奮闘記)

現代人な考え方もかなり多く……これは近年大河全般に言えることですし、もしかしたらそれが今の当たり前なのかもしれませんが、そうは言っても私は戦国時代が見たいねん! な私にとっては何とも物足りなく感じてしまうのです。


また、上記で挙げたいい点が裏目に出たパターンも。
本当にねえ。着眼点もさることながら、この脚本家さんと私のツボは絶望的なほどにずれている。


・私の「ここが見たい!」「こういう展開がいい!」ってのを、ことごとく外してくる。
確かに、着眼点が違うことで新しい発見はありました。けどね。。。

戦国時代なんだから、合戦シーンやそれに伴う策略が見たい! → ありません。
熱く、麗しい主従愛が見たい! → 主人公が女性のせいか、なんか違う。男同士でもそういう描写皆無。
大国の動向が見たい! → 描きません。
せめて、主人公たちが絡んだ歴史的事件(桶狭間、伊賀越えなど)は見たい! → さらっとor全カット。
隣国との駆け引きが見たい! → そんなことより村人たちと真夜中の田植え大会やろうぜ!
じゃあせめて、井伊家家中の関係性や具体的内情を見せて! → そんなことより赤ちゃんまだかなあ?

万事この調子。主人公の対比として登場してくるだろうと思っていた「お田鶴の方」など、影も形もなし。
この脚本家さんも去年の人と同じく、「視聴者の予想を常に裏切ってやろう!」という思惑が見え隠れするので、余計にこんなことになったと思うんですが……見たいところをことごとく外された挙げ句、「従来どおりのほうがましやったやん」とか思ってしまうとね、つまんないって思っちゃうのよね。。。

・史実そっちのけの完全創作エピが多過ぎた
直虎は史料が少ないので、創作もしかたがないと承知していますが、別に井伊直虎じゃなくても成立するエピが多過ぎるんですよ。特に、龍雲丸(オリキャラ)エピ
話に花を添える程度、または主人公サイドだけでは描けない箇所の補足程度で出すならまだしも、オリキャラをメインにすえた話にしちゃったら、史実の直虎とは何の関係もない話になってしまいます。
それが、一、二回ならまだしも、やたらと多い。

さらに、龍雲丸というキャラが、城だって生やせるチートキャラであるため、どんなに大変や! なことが起こっても、結局あいつがチート能力で全部何とかしてくれるんだろと、どっちらけな気分になる。
その上、直虎が龍雲丸にぞっこんでヌルいラブコメを延々繰り広げるから、余計にどっちらけになるとともに、初恋の人を生涯思い続けて……という最初のコンセプトさえも汚染してしまう。本当、このキャラに関わる全般、失敗だったとしか思えない。

後半、龍雲丸がいなくなっても、それは変わりません。というか、ここからは結構史実が残っているのに、史実を無視しまくる。

(前半は、敵対サイドの今川家もぼちぼち丁寧に描写していたのに)信長は基地外の悪い奴。家康は世界平和を目指す善玉という安い勧善懲悪構図にしてしまったり、

初陣から戦場で武功を挙げ続けたはずの万千代を戦場に出さず、延々事務職やらせるわ、直虎に家督を譲るの反対されるわ、直虎が本能寺の変に絡んでくるわ……そのくせ、万千代が活躍した伊賀越えはばっさりカット。もう、井伊家の必要ないじゃん。


・鶴を輝かせることに、全振りし過ぎた。
確かに、鶴には滅茶苦茶感情移入できましたよ? 鶴、めっちゃ可哀想。早く幸せになって! 頑張って! と、応援しましたよ? でもね、そうするために、井伊家メンバーをクズに描くのはどうなのと。

ただ屋敷に集まって、延々頭の悪い脳筋発言をぎゃあぎゃあ繰り返す&小野家をネチネチいびるだけ。それ以外は基本何もしない。くそニート。
たまに何かしたかと思えば、何の考えもなく、北条と連絡取ったりと余計なことをする。そしてすぐばれる。だが、打開策は何も考えていない。小野が尻拭いすると、「今川の犬め!」「こんなことになったのはお前のせいだ」と逆切れ。

他にも、いくら鶴パパが嫌いだからって、年端の行かない子どもも邪険に扱ったり、他の皆は元気いっぱい変わらないのに、鶴パパだけが尋常ではないほどやせ衰え、白髪になってく図とかもかなりやばかったのに、鶴パパが死にかけたら屋敷中を走り回るほど歓び、「あいつの息の根を止める呪詛を唱えてくれ!」と、主人公に頼んで……。

こんな奴らをどう好きになれと言うのか。てか、こんな家、守る価値なんてあるのか。小野家、こんな家さっさと見捨てちゃえばいいのにと何度思ったことか。

当然、こいつらが死んでも何の感慨も湧きません。
(ただただ、鶴苛め&鶴ageのためだけに存在し、人物描写の掘り下げや活躍を一切描いてもらえなかったキャラ設定には切なくなりましたけどね。それもどうなの)

じゃあせめて、幼馴染にして主の亀だけでもまともならましだったんですが、王子様の皮を被ったスケコマシのサイコパスなんだから目も当てられない。
特に、検地の回はやばかった。

亀「井伊のためを思うなら脱税したいけど、ばれた時に矢面に立たされるのはお前。井伊家も助けない。だから、脱税するかどうかはお前が決めてくれ。だが、俺はお前を信じてる」

このセリフだけでも最高にいかれてますが、隠し田がバレた瞬間。

亀「但馬! これはどういうことだっ?!」

さらに、この後。「さっきのこと、怒ってる?」と真顔で聞いたかと思えば、

亀「お前が俺を嫌ってるのは分かる。だから、俺のためじゃなくて、おとわのためと思って、俺に力を貸してくれ」

とにかく隙あらば鶴を傷つけてくる。
こうすることにより、幸薄になればなるほど輝く男・鶴はますます輝いていくわけですが、これってどうなの?

というか、主人公の初恋にして、生涯思われ続ける男がこんな屑のサイコパスってどういうことだYO! と、思うわけですが……

直虎(亀は鶴のことを心から信じてるのね! 素敵!)
どうしてときめける?! 意味が分からないYO! と、最初は絶句したわけですが……

直虎「亀以外と結婚したくないの。あなたと結婚せずにすむにはどうしたらいい?」
直虎「あーあ。こんなに修行が厳しいって分かってたら、鶴と結婚してればよかった!」
直虎「どうしてあんただけが生きて帰ってくるのよ! 亀はこれからの人だったのに!!」
直虎「お前か……お前が亀を殺したのか! 許さない! 亀を裏切って殺したお前を絶対に許さない!」

駄目だ、こいつもひでえ!!
確かに、好きな相手は親友()のことが好きで、自分に見向きもしないどころか誤解されて恨まれるとか、最高に幸薄案件だけどさ。

……ホント、鶴を輝かせるためとはいえ、このドラマはドブに捨てたものが多過ぎる。。。


と、鶴ageのために井伊家キャラ設定は死滅。
では、鶴が全てを捧げた主人公はいい女だったのかといえば……こいつが一番最悪でした。

 

・主人公嫌要素その1:「いつだって、自分自身の意思で進む道を切り開いてきたんや!!」
これ、江にも見られた要素ですね。流されっぱなしの主人公というのも困った話ですが、彼女たちの人生を彼女自身の意思で選択した……なんてことにすると、話がおかしくなるんですよ。

相思相愛の許嫁・亀が大人たちの事情で出奔。代わりに鶴と結婚しろと命令される。←ここまではいい。可哀想。

亀以外となんか結婚したくないから出家する! と、髪を切る。←ああ……そこまで亀が好きなのね。鶴に向かって「お前と結婚せずに済むにはどうしたらいい?」と真顔で聞くのはどうかと思うけど。。。

「そこまで亀以外と結婚するのが嫌ならやめてあげる。出家もしなくていいよ。代わりに、人質になりに駿河においで」という今川の命令に、「人質なんか嫌! 出家するから勘弁して!」と要求。←……お、おう。

今川家、またも主人公の言い分を聞いてくれる。が、出家したら、亀とも結婚できないことを今更知り、今更嫌だと駄々を捏ねる。周囲は「今川のせいで……おとわ、可哀想!」と嘆き、「井伊家のために出家しておくれ」と、おとわに懇願。←……は?

どう考えても、おとわの自業自得(そして、井伊家の大人たちがおとわにゲロ甘過ぎ)というか、最初以外全部おとわの意向どおりになっているというのに、いつの間にか井伊家のために出家する悲劇の姫になってるから訳が分からない。
(おとわの意思など全く通らず、無理矢理押し付けられて……なら、可哀想だと思うし、おとわは主筋の武家の厳しさを学び、後に活かせたと思うんですけどね)

……と、話は終始、この調子で続きます。
全部主人公の意思に沿って物事が決まる→残念! 見込み違いだった!→周囲「井伊家のために人生を翻弄されるなんと憐れな姫!」の黄金パターン。

だから、こちらとしては全然同情も共感もできない。
お嬢様にゲロ甘な優しい世界やなあ~。自業自得だろ、何悲劇ヒロインぶってんだ~。としか思えない。
(ちなみに、「私は井伊家のために腐った饅頭になる!」と、亀からの求婚を突っぱねたのは、未来からの逆算言動ですよね。
亀が戻ってくる前に、鶴としのが結婚して、生まれた子を井伊の世継ぎにって話が出てたしね。亀の代わりなんて、おとわ以外にもいくらでもいる。それなのに、出家してる上に女性のおとわに当主の座が巡ってくるなんて、誰も思わないよね、普通)

・主人公嫌要素その2:相手の都合を全く考えない。
子どもの頃から、我は我は我は……で、座右の銘は「諦めなければいつか思いは通じる!」と、自分最優先で相手のことをあまり考えない女でしたが、大人になってもそれは変わらず……てか、

城主就任時の直虎ステータス
井伊家の内情、武家の仕組み、城主のお仕事 → 知らん。
竜宮小僧として助けてきたという領民たちの暮らしぶり、武家と領民たちの関係 → 知らん。
十数年修行重ね、身についているだろう尼としての慎み深さ、慈悲深さ → 鶴、死ねや!

この無知っぷりが如実にそれを物語っている。井伊のため、領民のためと言い張ってる割には、相手のことなんて何も考えちゃいないし、知ろうともしていなかった。
猫和尚、あんた一体どんな教育してきたんだ。

でも直虎、そんなこと気にしない! 「やる気だけはあります!」と……

徳政令が何か知りもしないで、「出してやる。任せておけ!」とその場で口約束するも、ソッコー取り消すとか、
私情に駆られるまま、公衆の面前で鶴に幼稚な嫌がらせをしたり、献策を無視するとか、
家臣に「お前らに図ってもしょうがねえし!」だなんて暴言浴びせたり、図りもせず、勝手に所領替えしたり、商人を召し抱えたりとか、
虎松の後見もかねていたはずなのに、囲碁を教える以外はほとんど虎松と接触しなかったりとか、
「人手不足なので、お前の領地の民をくれ! 幸せにするから」とか、色々やらかす。 

城主なんて初めてだし、女の子だもん><とか言われても、これはひど過ぎる。
普通ならこんな城主、即排除だよ。

それなのに、鶴の血の滲むような尻拭い(&龍雲丸のチート能力)と主人公補正で全部何とかなっちゃうっていうね。

ついでに、真夜中に田植え(できるわけがない)してやり、字を教えてやっただけで、領民はころっと懐柔されちゃうし、
野盗集団引き入れても、「皆美味しいご飯を食べれば仲良しこよしにv」で即解決。
家来たちも「か弱い女を守ろうとしないなんて男じゃない!」だなんてふざけた理由で懐柔され……なんというイージーモード。

というか、「『女』の直虎がこんなに頑張ってるのに!」だの「か弱い『女』を守ろうとしない男なんて糞!」だの……何だよ、この理屈。

知らねえよ! 女だろうが何だろうが、城主としての才覚がないなら付き従えない。それだけや! ということで……

・主人公嫌要素その2:女(恋愛脳)
「女扱いするな!」と日頃偉そうに言っていても、この主人公は困ったことがあると必ず「女」を振りかざしてくる(特に、鶴に言うこと聞かせる時)

龍雲丸というオリキャラが投入されてからは、それがいよいよ幅を利かせていきます。
(そういや、龍雲丸との恋愛を正当化させるために、亀の隠し子を登場させ、「このスケコマシ!」と亀を罵倒させまくるというのも嫌でした。ホント、直虎(&このドラマ)にとって、亀って何なんだよ)

直虎「材木泥棒を捕まえてみたら知り合いイケメンだった。知り合いだから助けてよ! ……周囲に示しがつかない? これだから「男」って嫌なのよ! どうしてそんなに血が好きなの?! 私は「女」だから血なんて見飽きてるの! もううんざり!」

お前は何を言っているんだのAAを貼りたい。というか、これが城主の言葉かよ。
(あと、この回はやたら女を強調してたな。女の部屋に入ってくれるなとか、鶴が(振りですが)意見を聞いてやると言えば、「ありがとう、鶴v」と、甘えた声で幼名呼びするとか)

その後も、恋()に目覚めた城主さまはやりたい放題。

気に入ったイケメン材木泥棒を誰にも相談せず(勿論、同じく被害に遭ったもみあげへの了解もなし)、勝手に雇用(ついでに彼が率いるごろつきも雇用)

城主の仕事そっちのけで龍雲丸に逢いに行き、散々いちゃつき倒す。

当然もみあげにばれる。しかし、直虎悪気なし。龍雲丸たちはもう悪いことしないって言ってるのに(←昔の悪事についてはいいのかよ!)もみあげウゼエと思うだけ。余計もみあげに恨まれる。鶴、再び尻拭いに明け暮れる。

これが巡りにめぐって、もみあげ造反。尻拭いをしていた鶴が逆恨みされて血祭りに。

……鶴が処刑されるのは知っていたけれどさ。何、この糞みたいな理由。
おまけに、当人は自覚ないからね。「どうして鶴がこんな目に!」「こんなこと頼んでない!」とかほざいてるからね。目も当てられない。

が、真に目も当てられないのはここから。

井伊家を存続させるため、鶴を「地獄に堕ちろ!」と刺し殺す直虎。
しかし、翌週には鶴を殺したことを忘れており、皆から「精神病むほど辛かったんだね」と同情され、総動員でカウンセリングを受ける。皆、仕事はどうしたの?

何とか鶴を殺したことを思い出すが、「いつも私だけが生き残ってしまう」と愚痴りまくる(生き残ったやない。生かされたんだよ!)そして、虎松養子の件と「そんなに辛いなら城主辞めていいよ」という言葉に、あっさり当主を辞め、井伊家を潰す。

尼であることも武家の身分も何もかも捨てて、(亀や鶴との思い出の井戸端で)好きな男・龍雲丸と幸せなキスをして同棲を始める。
母親は、今までよく頑張ったね。これからは好きな人と一緒に女の幸せを見つけてね! と祝福。

男城主なら絶対に見られない展開です。
その点で言えば斬新だし、女主人公という持ち味を生かしたことになるのでしょうが、こんなの祝福できるか!

お前は当主の仕事を何だと思っているんだ?! ……ということで、


・主人公嫌要素その3:考えなし&信念ぶれぶれ

城主就任当初「愛しい亀の依代として立派な城主となり、井伊家を守る!」

龍雲丸「城主なんて、年貢と称して民百姓から食いものをふんだくる大泥棒じゃねえか!」
直虎「そうね。確かに糞だわ!」
直虎ママ「そうね、糞よ。武士はそうしないと生きていけない生き物だから!」
直虎パパ「……え?」

亀の隠し子発覚。直虎「このスケコマシ野郎がぁあああ!!!」
そして、材木泥棒・龍雲丸といちゃいちゃパラダイス。結果、鶴をぶすり

直虎「井伊家を潰します。だってね、もう色々としんどいから……そもそも御家なんてものがあったから、私の大好きな人たちはみな死んでしまったのよ? だったら、これ以上犠牲者が増えないよう……生きている者たちを守りたいから家を潰す!」

城主を辞め、尼も辞め、ついでに虎松もポイして、龍雲丸の女に。鶴をこの手で殺した責任? 知らんがな。
直虎ママ「私、そろそろ孫の顔が見たいわv」直虎「そうねv」

堺にいく龍雲丸と、再会を約束をしてさようなら。以後、中村屋に龍雲丸のことを聞くまで綺麗さっぱり忘れる。

万千代「井伊家を再興したいと思っています」
直虎「御家なんてものに拘って戦うなんて馬鹿じゃないの? くっだらねえ! 井伊家は皆の心の中にあるからいいんだよ! 御家なんかなくたって立派にやっていける。現に、私ともみあげが上手くここを取り仕切ってんだから。家督は絶対やらん!」

直虎「瀬名が死んだ?! 信長……よく知らないけど、何の罪もない瀬名を殺すなんてきっと悪い奴よ! 人が死ぬのはもううんざり! だから、万千代を使って、家康に信長を殺させて、戦のない世を作るわ!」

ぶれぶれです。最後なんてよく知らん信長殺して世界平和とか、訳分からんこと言っちゃってるし。
やると息巻いても、それがどういうことなのか分かっていない。結局、周囲から全力サポートしてもらうも全部途中で投げ出して……まるで、世間知らずなお嬢様の気まぐれです。
しかも、やめる時は全部、相手のせいにしているからたちが悪い。

隠し子がいた亀が悪い。自分を犠牲にする策を勝手に用いた鶴が悪い。堺へいく龍雲丸が悪い。言うこと聞かない万千代が悪い。瀬名を死なせた信長が悪い。
井伊家という御家が悪い。そもそもこの世の在り方が悪い……と、相手をどんどん壮大にしていってるけど、これって結局、自分の覚悟のなさ、視野の狭さを露呈していってるだけなんですよね。

言い訳によく使われた、現代人目線の武家社会批判もひどかった。
「武家は領民から食いものをふんだくるだけの大泥棒」「罪人を簡単に処刑する男(武家)は糞」「戦するのは領地を広げたいだけ」「御家を守るためだと、誰かを犠牲にするのは間違っている」「そもそも御家なんてものがあるのが全部悪い」

でも、武家は糞だけど自分たちは違うから! と、相変わらず年貢は取り、罪人をちゃんと処罰しなかったせいで鶴を殺す羽目になり、もう誰にも死んでほしくないからよく知らない信長を殺せと家康を説得とか、矛盾しまくりな持論を展開し……。

御家がなくたってやってけるってのもねえ。

それは、一農婦に成り下がろうが、野盗の女になろうが、「殿様、殿様」「表向きの城主はもみあげでも、真の城主はおとわさま!」と崇めてくれ、戦で家が燃やされようが、「灰は肥料になるから燃やされてよかったよ♪ だから気にしないで♪」と優しく慰めてくれる、ファンタジー農民がひしめく井伊谷だからこそ成立する話でしょ?
……いや、たとえ領民がどれだけよいしょしようが、策を考えたのが直虎だろうが、その策を用いるか否かを決めるのも、実際それを行うのも武家のもみあげ。金を出し、戦が起これば兵を出すのも全部もみあげ。
だから、井伊谷を統治しているのは武家のもみあげであるわけで、やっぱりアホな勘違いです。

こんな女に、「志を継げ!」と言われても、志ってなんやねんとしか思えない。
具体的に出てきた「よそ者も温かく迎え入れられる慈愛の心」とか「徹底的に戦いを避ける」ってのもねえ。
自分にも他人にも異常に厳しく、戦では常に先陣切って戦い傷だらけだった直政には当てはまらないし……(実際、劇中でも先陣切って突っ込んでったし)

ということで、このドラマには一貫したテーマなんか全然なくて……いや。一つだけ、決してぶれないテーマがあった。

主人公嫌要素その4:「愛してるから」
これが今回、私を最も苦しめた要素です。

このドラマ、色んなタイプの男性陣がいましたが、井伊家の男たちはほぼ全員、直虎お嬢様絶対主義。
どんな仕打ちを受けても許し、我が儘を受け入れ、お嬢様に尽くし続けなければならない鉄の掟が課せられています。

「あんたと結婚しないですむにはどうしたらいい?」だの、「亀に力を貸してあげて(意訳:亀のために犠牲になれ)」だの、ぐさぐさ心を抉ることしかほざかれなくても、支え続けなければなりません。

お嬢様を娶る気満々で帰って来ても、「私、腐った饅頭になるから別の女と結婚して」と言われたら、別の女と結婚し、子作りに励まねばなりません。
それでも、第一にすべきは、他の女と結婚しろと言ったくせにやたらと首を突っ込んでくるお嬢様。他の女と結婚したのはお前に言われたから、しかたなく……ということを示し続け、密会を重ね、「本当に愛してるのはお前」「おとわさまのために」と、愛を囁かねばなりません。

猫和尚におだてられ(この人も結局よう分からんかった)、「城主のこと全然分からんけど城主やりたい!」とか言い出したら、全力でサポートします

忠告を無視されるどころか、「お前らと議論しても無駄」と吐き捨てられようが、
何の相談もなく、全部勝手に物事を決められようが、
史実では妻子がいるはずなのに、「直虎に、生涯独身で尽くしてほしかったからv」という製作者の願望により、生涯独り身にされようが
「材木泥棒は知り合いのイケメンだから助けて」反論すれば「これだから男っていや!」とか言われようが、
その材木泥棒を勝手に雇い、仕事と称して公務を放り出し、いちゃつき倒されようが、

どう考えても当主に向かない。ぶっちゃけ座敷牢にぶち込んでおいたほうがいいという、正常な自分の叫びを無視して従い続けます。

たとえ、当主やりたいから力を貸せ→井伊家潰すから、もみあげの家来になれ→家康に天下取らせたいから万千代に仕えろ。と、次から次へと一貫性の欠片もない命令をされようと。

惚れた女の我が儘を聞いてやる、男冥利に尽きます(格言)

また、お嬢様の手で殺されるのは最高の栄誉です。
「裏切り者め! 地獄へ堕ちろっ」は究極の愛の囁きです

犯罪者とのランデブーを庇い続けた結果なのに? そんなことは些末なことです。

これは、最上のご褒美……え? これは井伊家を存続させるための策じゃなかったのかって? 何言ってるんです。ご・褒・美です。

幼馴染の忠臣を逆臣に仕立てて殺した当主の責務など、存在しません!

ですから、お嬢様がお辛いのであれば、当主職も家名も放り投げていただいて全然構いませんし、好きな男の嫁になるのだって何も問題ない……え? そんなの完璧な犬死じゃないか。それに、井伊家はどうなる? 悔しくないのかって? 馬鹿なことを!

惚れた女の幸せが、男の幸せです(至言)

お嬢様が幸せになるのであれば、何でもよいのです。

あれだけケツを追っかけていたくせに、「やりたいこと終わらせたら堺に逢いに行く」と涙ながらに約束したくせに、離れた途端、綺麗さっぱり忘れ、
九年ぶりに再会しても「久しぶり! 南蛮船用意しろや!」「やりたいこと終わらせたら……? そんな約束知らない★」とほざかれても、「思い出しもしないくらい、充実した毎日を送れていたのならよかった★」と、お嬢様の幸せを喜びましょう。

一緒に南蛮船に乗ろうという誘いをソッコー断られても、お嬢様が望むのであれば、お嬢様が死んだらともに死に、「今度こそ、俺も連れてってくれ」と懇願しましょう。

そこに、他に男が二人もいて……内一人は全く知らない人でも、4Pをやろうと言われたら笑って受け入れましょう。

惚れた女の幸せが、男の幸せです(至言)

その後、ソッコーでハブられても、笑顔で受け入れましょう。

惚れた女の幸せが……略


……もうね、ホント……これが一番駄目だった!!
このドラマ、「惚れてるから」で、主人公を許容し過ぎ。

どんな失言、暴言も許され、やりたいことは全力でサポートされ、一緒に頑張ってきたことを投げ出したり、別の男とくっついたり、相手のこと忘れたりしても笑って許してもらえる。

しかし、男たちは……惚れた女の我が儘は、どんなことでも許して聞き続けろ。ひどい仕打ちも耐えろ。死ぬまで愛し続けろ。主人公のために喜んで犬死しろ。これですからね(そして全員、物の見事に犬死)

ここまでパワーバランスが偏り過ぎてる関係、嫌過ぎる。
私は、双方負けないくらい愛情(&対価)を注ぎ合ってる関係が好きなんだよ!!

……という、超個人的好みの問題もありまして、今年の大河もめでたく(?)「大嫌い」入りです。
鶴を殺した後、(龍雲丸とくっついてもいいから)井伊家存続に死ぬまで努め続けていたなら、全然違っていたんですが……私は大河ドラマに、ドリーム小説(ハーレムエンド)など求めていないのよ。

ということで、今回もこんな結果になってしまったわけですが……そろそろ、主人公が好きになれるドラマが見たいなあ。最近、主人公が一番糞やって思う話ばかりで。。。

次回主役の西郷どんは、男女問わず、愛さずにはいられないいい男なのだそうですが、さてはて。。。

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無題

管理人様に同感です。私も当時の価値観に近づけた大河が見たいです。歴史物に、現代人のモノサシはいらないと思うんですよ。リアリティなくなっちゃいますよね。なのに最近の大河って現代人丸出しの価値観なんですよね。篤姫以降の大河で、当時の価値観大事にしてたのは、真田丸と八重の桜幕末編くらい。今年の作品も第1話から既に現代人価値観丸出しで期待薄です。
  • りん さん |
  • 2018/01/14 (02:09) |
  • Edit |
  • 返信

コメントありがとうございます!

りん様

コメントくださいましてありがとうございます。
当時の価値観に近づけた大河が見たい。全くもって同感です!! 
現代人思考丸出しな登場人物も白けますが、現代の価値観で当時の人々を上から目線で批判したりするのには怒りを覚えます。なぜ、当時の人々や価値観を理解し、尊重しようとしないのか。もっと先人たちに敬意を払ってもらいたいです。
その点で言えば、例に挙げられた「八重の桜」幕末編は素晴らしかったですよね。ああいう大河がもう一度見たいですし、今年は頑張ってもらいたいんですけど、糸のあの演出を見ると……><
  • 雨月 さん |
  • 2018/01/15 (22:53) |
  • Edit |
  • 返信

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