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雨月のブログです。BLサイト「イチゴウニゴウ。」運営中。

   

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ドッグヴィル(ねたばれ注意)

「一人の美しい逃亡者が現れ、一つの村が消えた……」



【ストーリー】アメリカ・ロッキー山脈の村に、ひとりの女グレースがギャングに追われて逃げ込んでくる。初めは彼女をいぶかしむ村人たちだが、2週間で村人全員に気に入られることを条件に村に留まることを承認。献身的な肉体労働をこなすグレースだが、警察に手配されていることが発覚し、事態は急転する。


だだっ広い倉庫のような空間に、いくつかの家具を除いては、すべての家や道、犬までが床に白線で描かれているだけ。簡略化した舞台セットのような背景……っていうのに最初吃驚しましたが、これはこれで、この村の様子を上手く表現してるんだろうなと話が進んでいくうちに思うようになったり。
(外との関わりを切り離してる閉鎖感、住人の生活なんて全部筒抜け、でも、見てみない振り…みたいな感じが)

人間一度たがが外れるとここまで、非道になれるものかと主人公グレースを虐待または奴隷として扱う村人たちに呆れたり、自分の何処かにもこんな一面が?と後ろめたくなったりもしましたが、ここまで酷いことになったのはグレース自身にも責任があったように思えました。

匿ってもらってるという引け目もありましたが、グレースは村人たちの何もかも(どう見ても村人の方が悪いことであっても)を赦していました。
「きっとあなたはいらいらしてて、魔が差したのね」「普段の貧しい生活で欲求不満になって…」「あなたは弱い人だから…」一見すると慈悲深く寛容な行為に見えるけど、よくよく考えてみるとこれは完全に相手を自分より下に見た物言いですよね。

悪いことはやっぱり悪いと言ってあげる方が余程慈悲深いんじゃないのかなぁ。「赦す」ことは素晴らしい行為だと思いますが、何でもかんでもただ赦してるだけだったら、相手は自分が悪いことをしてることにも気付かない上にさらに過ちを繰り返しかねない。

グレースと村人たちがまさにそれで、グレースが何でもかんでも許容し赦してきたから、村人たちは罪悪感も覚えずグレースへの仕打ちをエスカレートさせていってしまったんではないかと……。

で、この映画のテーマ(?)ともいうべき「傲慢」

この映画を観終わって最初に思ったのは、昔受けた哲学の授業でした。
確か、カントだったと思うんですが、おいはぎにあって怪我をして倒れた旅人とその前を通る人々の反応を通して、結論として、「真の善行とは見返りを求めず、今まで教えられてきた倫理を考えるより先に行う行為である」と説いたって授業。
これを聞いた時は、「え~困ってる人を助けるのは倫理的に当然って考えて助けるのもダメなの?」と思ったものですが、この映画を観て、嗚呼カントは正しかったんだと思うようになりました。

確かにカントのいう善行ってなかなか出来るモンじゃないですけど、強制でもなければ、見返りも求めない行為だからこそ、押しつけがましくなくて、「親切にしてやってるんだ」って傲慢な考えも抱かない訳ですから。

村人たちはグレースを匿ってやってるんだから、見返りがあって当然と考え、
グレースはここまで誠意を見せてやったんだから、村人たちは自分を受け入れるか、あるいは”少しは”今よりましな人間として改心して当然と考えていました。

その結果、村人たちは見返りを求めすぎてグレースを虐待し、
グレースは自分がどれだけ血を吐くような想いで赦し続けても愚かで居続ける村人たちに失望と怒りをもって、村を消し去ってしまう…。

本当の善意って何なのか、考えさせられる映画でした。


因みに、グレース役を演じていたニコール・キッドマン。本当に美人です。
ほとんど汚い身なりで、最後の方奴隷のような扱いを受けるところなんて、普通小汚く見えるもんですが、どうしてどうして、ずっと綺麗で美しいまま(に見える)
薄暗く、陰惨な情景の中で彼女がいるところだけ、ぱっと光が差してるような。

彼女あったればこその映画でしたね。

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