壱号ブログ
雨月のブログです。BLサイト「イチゴウニゴウ。」運営中。
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「蟲」感想
「 許して下さい。許して下さい。ぼくはあなたがかわいいのだ。生かしておけないほどかわいいのだ 」
【あらすじ】 厭人病者の柾木愛造は、女優の木下芙蓉に密かに想いを寄せている。芙蓉は柾木の友人でもある男と恋人であり、柾木は彼らの逢引きの様子を覗き見しては、満たされぬ想いに悶えていた。
だがある日、ついにその想いが爆発し芙蓉を襲って殺害。屍を自分の部屋に運び入れる。彼女を所有した喜びに打ち震える柾木。しかし芙蓉の美しい屍は、恐ろしい速度で蟲に犯され腐り始めていった。死体防腐を試みる柾木だったが、素人にうまくできるはずもない。次第に常軌を逸し、柾木は屍に絵の具で化粧をほどこすのだが……。
「乱歩地獄」に収録されてる最後の一つ。ということで読んでみたのですが、多分崎原氏がトラウマになった話ってこれだろうなぁ。「蟲蟲蟲蟲…」って書いてあって気持ち悪くなったって言ってたし。
まぁあらすじ見るだけでも十分過激ですが、果たして……。
【あらすじ】 厭人病者の柾木愛造は、女優の木下芙蓉に密かに想いを寄せている。芙蓉は柾木の友人でもある男と恋人であり、柾木は彼らの逢引きの様子を覗き見しては、満たされぬ想いに悶えていた。
だがある日、ついにその想いが爆発し芙蓉を襲って殺害。屍を自分の部屋に運び入れる。彼女を所有した喜びに打ち震える柾木。しかし芙蓉の美しい屍は、恐ろしい速度で蟲に犯され腐り始めていった。死体防腐を試みる柾木だったが、素人にうまくできるはずもない。次第に常軌を逸し、柾木は屍に絵の具で化粧をほどこすのだが……。
「乱歩地獄」に収録されてる最後の一つ。ということで読んでみたのですが、多分崎原氏がトラウマになった話ってこれだろうなぁ。「蟲蟲蟲蟲…」って書いてあって気持ち悪くなったって言ってたし。
まぁあらすじ見るだけでも十分過激ですが、果たして……。
今まで読んだ乱歩短編の中で一番長かったこのお話。
私の中では「芋虫」の次に読み応えがありました。
手法としては「芋虫」のように最初から圧倒的世界観・設定で引き込むのではなく、「鏡地獄」のように最初は誰でも大なり小なり共感できる心の疵から始まり、それが徐々に常軌を逸したものに転がり堕ちていく墜落感で引きずり込むような感じ。
まったくもってこの主人公「柾木愛蔵」という人間は、「愛蔵」という名前がなんと皮肉めいてるんだろうと…。
「愛蔵」→「アイゾウ」→「愛憎」では? って思うくらい。
愛おしく想えば想うほど、それと同じだけ憎しみが湧いてきてしまう。
何故なら、誰も自分のことを絶対愛してなんてくれないと思っているから。
この絶望感の底知れなさの表現が本当に乱歩先生は上手い。
彼が完全に狂った獣になり下がればここまでの苦悩はないのでしょうが、残念ながら非常に人間らしい理性が残ってしまっている。
そしてその部分が、限りなくまっとうになりたいと叫んでいる。
真の狂人にもなれず、まっとうな人間にもなれず。
そのどっちつかずの曖昧さが痛くてしょうがない。
そんな耐えがたい絶望感を彼は「自分は人間嫌いで、独りでいる方が好きだから」と無意識のうちに偽って、長らく自分の殻に閉じこもり、目を背けて生きてきました。
何故なら、彼はそれと同じくらい自意識過剰で異常に自尊心が強かったから。
しかし偶然にも再会した初恋の相手に再び恋をして、彼女を欲してしまった時から、その絶望感が彼をどんどん狂気に駆り立てていきます。
そして初恋の相手が忘れられず、彼らの情事を覗き見していた時。二人が自分のことを馬鹿にして嘲笑っているのを聞いてしまった瞬間、彼の何かが壊れてしまいます。
「おれは人種が違うのだ。だから、こういう卑劣で唾棄すべき行為が、かえっておれにはふさわしいのだ。この世の罪悪も、おれにとっては罪悪ではない。おれのような生物は、このほかにやっていきようがないのだ」(本文抜粋)
彼は道を踏み外し、彼女を殺してしまいます。そして死体になった彼女を抱いて初めて安らぎを得る。
ここまででもかなりの狂気なのですが、乱歩先生はここで終わりません。
本当に凄いのはここから。
死体ですからね、腐っていくんですよ。彼女が。
折角自分だけのモノに出来たのに、微生物=蟲が彼女を自分から奪おうとしている。
こっからの愛蔵さんの奮闘ぶりの描写が物凄い。
ホルマリン漬けにしようとしても上手くいかないから、絵具を塗りたぐって現実逃避して最後は……。
最後藁にもすがる思いで手に取ったミイラの作り方を何度も読んでおきながら、「なんだっけなぁ……なんだっけなぁ……」と繰り返すあたりなんて悪寒が止まりませんでした。
そしてあのラスト。
蟲に奪われる前に自分が喰らい尽くしてしまおうと思ったんでしょうか。
想像するだけでも凄惨な状況なのになんだか凄く物悲しかった。
どれだけこの人は「愛」が欲しかったのかなぁなんて思うと……。
ということで、これで「乱歩地獄」に取り上げられた作品は全部読みました!「火星の運河」がない? いや、だってあれ短いしよく意味分かんないし、感想はいいかなとk…略
これで予習はバッチリ! さぁて、借りに行こう。
私の中では「芋虫」の次に読み応えがありました。
手法としては「芋虫」のように最初から圧倒的世界観・設定で引き込むのではなく、「鏡地獄」のように最初は誰でも大なり小なり共感できる心の疵から始まり、それが徐々に常軌を逸したものに転がり堕ちていく墜落感で引きずり込むような感じ。
まったくもってこの主人公「柾木愛蔵」という人間は、「愛蔵」という名前がなんと皮肉めいてるんだろうと…。
「愛蔵」→「アイゾウ」→「愛憎」では? って思うくらい。
愛おしく想えば想うほど、それと同じだけ憎しみが湧いてきてしまう。
何故なら、誰も自分のことを絶対愛してなんてくれないと思っているから。
この絶望感の底知れなさの表現が本当に乱歩先生は上手い。
彼が完全に狂った獣になり下がればここまでの苦悩はないのでしょうが、残念ながら非常に人間らしい理性が残ってしまっている。
そしてその部分が、限りなくまっとうになりたいと叫んでいる。
真の狂人にもなれず、まっとうな人間にもなれず。
そのどっちつかずの曖昧さが痛くてしょうがない。
そんな耐えがたい絶望感を彼は「自分は人間嫌いで、独りでいる方が好きだから」と無意識のうちに偽って、長らく自分の殻に閉じこもり、目を背けて生きてきました。
何故なら、彼はそれと同じくらい自意識過剰で異常に自尊心が強かったから。
しかし偶然にも再会した初恋の相手に再び恋をして、彼女を欲してしまった時から、その絶望感が彼をどんどん狂気に駆り立てていきます。
そして初恋の相手が忘れられず、彼らの情事を覗き見していた時。二人が自分のことを馬鹿にして嘲笑っているのを聞いてしまった瞬間、彼の何かが壊れてしまいます。
「おれは人種が違うのだ。だから、こういう卑劣で唾棄すべき行為が、かえっておれにはふさわしいのだ。この世の罪悪も、おれにとっては罪悪ではない。おれのような生物は、このほかにやっていきようがないのだ」(本文抜粋)
彼は道を踏み外し、彼女を殺してしまいます。そして死体になった彼女を抱いて初めて安らぎを得る。
ここまででもかなりの狂気なのですが、乱歩先生はここで終わりません。
本当に凄いのはここから。
死体ですからね、腐っていくんですよ。彼女が。
折角自分だけのモノに出来たのに、微生物=蟲が彼女を自分から奪おうとしている。
こっからの愛蔵さんの奮闘ぶりの描写が物凄い。
ホルマリン漬けにしようとしても上手くいかないから、絵具を塗りたぐって現実逃避して最後は……。
最後藁にもすがる思いで手に取ったミイラの作り方を何度も読んでおきながら、「なんだっけなぁ……なんだっけなぁ……」と繰り返すあたりなんて悪寒が止まりませんでした。
そしてあのラスト。
蟲に奪われる前に自分が喰らい尽くしてしまおうと思ったんでしょうか。
想像するだけでも凄惨な状況なのになんだか凄く物悲しかった。
どれだけこの人は「愛」が欲しかったのかなぁなんて思うと……。
ということで、これで「乱歩地獄」に取り上げられた作品は全部読みました!
これで予習はバッチリ! さぁて、借りに行こう。
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