「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」感想

「　人生は素晴らしい――・・・　」




あらすじ： 80代の男性として誕生し、そこから徐々に若返っていく運命のもとに生まれた男ベンジャミン・バトン。時間の流れを止められず、誰とも違う数奇な人生を歩まなくてはならない彼は、愛する人との出会いと別れを経験し、人生の喜びや死の悲しみを知りながら、時間を刻んでいくが。（シネマトゥデイ）

好きな俳優（ブラピ、ケイト）が出ていることと、フォレスト・ガンプの脚本家さんが脚本を書いてること。そして、「生まれた時は８０歳でどんどん歳を取るごとに若返っていく」という設定の奇抜さに惹かれ、見て参りました。

率直な感想としては、面白かったと思います。
フォレスト・ガンプが好きな人は好きなんじゃないですかね。全体的に共通項が多かったですから。

主人公が特殊な人（？）であること、ヒロインが自由奔放で主人公を振り回すとこは元より、個性的なサブキャラクターたちとか、重くなり過ぎず、かといって軽くなりすぎない心地よい世界観とかね。
（ただ、上映時間が3時間弱もあるということもあり、途中どうしてもだれてしまいますが）

目を引いたのは主演二人の美しさですね。

バレエを踊るデイジー、凄く綺麗でした。
前半、おばあちゃんになってしまったデイジーはじめ延々と老人ホームの爺さん婆さんばっかり見せられたせいか、彼女の若々しい美しさが際だっていたように思います。
嗚呼、こんな瑞々しく綺麗な彼女もあんなに老いてしまうのか…。

で、若返ったベンジャミン。話の三分の二以上はブラピは老けていたので、最後の若返りっぷりには吃驚しました。嗚呼、なんて麗しい美青年！　しかし、浮かべる表情は実に悲しげで、それさえも綺麗でした。

ってか、こうしてみると人間の若い時なんてほんの僅かなんだとしみじみ。
あと、生まれる時も死ぬ時も人間は誰かの世話にならなければならないんだということ。

赤ちゃんと老人。見た目は全然違うけれど、根本はもしかしたら一緒なのかもしれない。

老婆になったデイジーが赤ん坊になったベンジャミンの世話をする姿を見て、なんかそう思えました。で、このへんがベンジャミンが歳を取るごとに若返る設定にした真の狙いがあるのかも、とか思ってみたり。
（そういや、なんでベンジャミンは老人で生まれて若返っていくのかの説明は全くなかったなぁ。やっぱり、冒頭の秒針が逆回転する時計が原因なのかしらん？？）

あと、どんな人間でもまっすぐ人生（または運命？）に向き合えば、愛されるんだということとか。
（ベンジャミン。課せられた運命は重いモノでしたが、それ以外は相当に恵まれてましたからね）

それと、話の結末は予想通りで意外性はなかったのですが（欲を言えば、ベンジャミンが死んだとこで終わって欲しかったな。あそこで終わった方が、余韻が良かった）、いい意味での裏切りはありました。

それは、結婚して子どもが出来てから、二人が別れた理由が「ベンジャミンが、自分は愛する娘の父親にふさわしくないと思ったから」だったことです。

私は、別れたいと言い出すのは絶対、デイジーの方だと思っていました。

女性にとって……特に、バレリーナなんていう、容姿、動きで美を追求してきたデイジーにとっては、老いていくことは非常に辛いことだったと思うのです。人生の伴侶がどんどん若返っていくならなおさら。

だから、彼女はそれに耐えられずに別れたがるだろうと思っていたんですが、彼女はそれを言わなかった。そして、ベンジャミンと娘と温かな家庭を築こうとしていた。

結局、出て行く彼を引き留めなかったし、他の男と結婚したり（まぁそれは愛情ってよりも娘には父親が必要だったからっぽいですけど）してしまいましたが、そこが非常に好感が持てました（彼を看取ったところも含めて）

なので、私は結構彼女が好きです。とは言っても、崎原氏が言うようにクィニーやエリザベスがいい味出し過ぎてて、影が薄い（特に中盤）のは否定出来ませんが（苦笑）

そう言えば、最後にふと思ったのですが、８０歳で生まれてくるってことは、もうすでに寿命が決定づけられてる（０歳児で死ぬとするなら）ってことだよな？　とか思ってみたり。知り合った人と逆行して生きなきゃいけないのも辛いけど、これもこれできついなぁ…。