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雨月のブログです。BLサイト「イチゴウニゴウ。」運営中。

   

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復讐者に憐れみを

「 お前は多分、きっと……優しい人間だ。
       だから……分かるだろ? 俺がお前を殺す理由が 」


<ストーリー>

聴覚障害者のリュは、病気の姉を救うため自分の腎臓を移植するつもりだったが、血液型が合わない。さらに、勤務先の工場を解雇され、わずかな退職金も、臓器の密売人に騙し取られてしまう。そんなリュに、恋人のヨンミは、工場の経営者ドンジンの娘を誘拐しようと持ちかける・・・。


第二部、物凄い衝撃を受けた「オールドボーイ」と第三部イ・ヨンエの般若のような泣き笑い顔が忘れられない「親切なクムジャさん」の復讐三部作の第一部「復讐者に憐れみを」

どうせなら三部作全部制覇したいと思っていたのですが、やっと見れました!

で、感想ですが、悲惨さ、救いようのなさ……どれも凄い。他の二作より全然上です。
多分、この映画に流れる淡々とした妙なリアルさがそう思わせるんだと思います。

特に最初。身近に感じられそうな設定、空気から入るんですが、そこからだんだん歯車が軋みだして、最後は完全に一般社会から逸脱した血で血を洗う復讐劇に転がっていくさまがね。
ホント、気が付いたら……一体どうしてこんなことに? って感じです。日常に潜む何かの深みにうっかりはまってしまったようなっていうか…。
日常生活なんて、ほんの些細な出来事で一瞬にして一変する。そう無言で言われてるような薄気味悪さがねぇ、もう…(←だから、何?!)

それにこの復讐者たち。最初は互いにただの善良な一般市民であること、復讐に駆り立てられる気持ちも分かると思える程、とんでもなく不幸な目に遭ってることなどが、丁寧に描かれているので、どっちにも肩入れ出来ない上に、互いが哀れに思えて、始終もやもや感が消えません。
で、それは作中の復讐者たちも互いにそう感じ合ってるから、なお痛い。

二人ともただただ愛する人を助けたい、または幸せに暮らしていきたいと思っていただけなんです。
他人を傷付けたい訳じゃなかった。

どうにかして姉を助けたいと必死で最善の道を探し続ける聴覚障害者の青年リュ。
最初の純粋で姉思いな好青年が印象的だっただけに、押し寄せてくる災難と悪意の果てに狂気に満ちた殺人者に変貌していくさまが痛々しかったです。
(ってか、この俳優さんの笑顔がなんかやたら気に入りました。あのふわっと温かい、でも何処か繊細さの残るあの笑顔……ヨン様よりいい!)


で、その恋人のヨンミ。諸悪の根元です(この女がリュをそそのかさなきゃリュはドンジンの娘を誘拐しなかった訳ですから)ってか家がテロリストってことは金持ちなんだろ? だったら、誘拐を勧めるより手術代立て替えてやるとかどうして言えないのか…
物凄い短絡的な思考回路に吃驚です。

金持ちは全員貧乏人から金を巻き上げる悪い奴。
お金を受け取って子どもをちゃんと帰したなら、被害者の親は子どもの大事さを痛感して、さらに大事にする。これは“いい誘拐”とか…。

なんて、幼稚な…。
けれど、妙に可愛くて愛らしい女性なんですよね。「オールドボーイ」のミドでも思いましたが、この監督はこういう妙な魅力を持った女性の描き方が上手いですね。


と、なんだかんだ言って、一番目を奪われたのは娘を殺され復讐に燃える父親、ドンジン。
淡々と冷静に狂気を帯びていく様が圧巻です。

娘の解剖シーンでは嗚咽を殺し、震えていたのに、リュの姉の解剖ではあくびをし、ヨンミを拷問に掛ける時などは泣き叫ぶヨンミを目の前に出前の担々麺を平然と食べて……。
(てか、ここでヨンミにプラグを繋ぐシーンがなんかエロかった。耳べろりって…いやん(←馬鹿))

で、一番印象深かったのが、娘が溺れ死んだ川の中でリュと対峙したシーン。
「お前は多分、きっと……優しい人間だ」
あの科白がズシンときます。ドンジンは何故リュが娘を誘拐せざるをえなかったのか。ちゃんと理解している。
それでも許すことが出来ない。復讐せずにはいられない。

そうして、最後。復讐を成し遂げたドンジンも別の復讐の刃に倒れ、どうして自分が殺されなければならないのか分からない。娘の仇を取っただけなのにと呟きながら、話は終わり……物凄い後味の悪さが残ります。

何故なら、殺された復讐者たち全員が「どうして俺がこんな目に?」と思いながら死んでいくからです。
愛する人のため、愛する人の仇を取っただけなのにどうして? と(あの理解出来ないという処が「オールドボーイ」との違いかなぁ)
盲目的でただ一個人に偏りすぎた愛情は、こんなにも人を狂気に駆り立てるんだなぁ…。

ということで、決して人には勧められないし、何度も見たいと思う映画ではありませんが、見て良かったとは思いましたです。はい。

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