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「西郷どん」総括

今度の大河の主役が西郷隆盛で、演じるのは堤さんと聞いた時は、私の胸には希望がわき上がりました。
今話題の若手を使うことなく、しっかりとした演技力の人を主役に据えてやろうとしているなら、少しは期待が持てるのではないかと。

しかし、堤さんがこのオファーを辞退したという報が流れてからの、このあらすじ。


【物語】
西郷隆盛(小吉、吉之助)は、薩摩(鹿児島)の貧しい下級武士の家に育った。両親を早くに亡くし、家計を補うため役人の補佐として働くが、困った人を見ると放っておけず、自分の給金も弁当も全部与えてしまう始末。西郷家はますます貧乏になり、家族は呆れかえるが、西郷は空腹を笑い飛ばす。
そんな愚直な西郷に、カリスマ薩摩藩主・島津斉(なり)彬(あきら)が目を留めた。「民の幸せこそが国を富ませ強くする」と強く主張する斉彬に、西郷も心酔する。西郷は、斉彬の密命を担い江戸へ京へと奔走。薩摩のキーパーソンとなっていく。

生涯の師・斉彬との出会いと別れ。篤姫との淡い恋。仲間との友情と反目。多感な青年期を経て、3度の結婚、2度の島流し…。極貧の下級武士に過ぎなかった素朴な男は、南国奄美で愛に目覚め、勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、揺るぎなき「革命家」へと覚醒し、やがて明治維新を成し遂げて行く。



西郷が主役だというのに、篤姫との淡い恋だの、愛に目覚めるだの……大久保を差し置いて、勝や龍馬を盟友に挙げるセンス。

見える……見えるぞ!! 我が頭上に死兆星が!!!!!
そして、その予感はものの見事に的中。




>web拍手レス
12月19日19:47 kou様 
いつもコメントありがとうございます。西郷どん。何なんでしょうね。西郷という題材が難しいというのは分かりますが、それにしてもここまで……(遠い目)思いの丈は総括に書いたので、ここではこのくらにしておくとして、来年の大河。とりあえず見てみようと思ってはいますが、感想はお休みしようと思っています。見る前からこういうのもなんですが、どうも感想を書ける気がしない(苦笑)再来年は書く気満々なんですけどね。まあ、面白いドラマであることを祈ってはいます。新刊表紙。「比べられる弟が美人過ぎるから不細工と言われるだけで、一般的に見れば美形」とお願いしたらこんなに美人に描いてもらってびっくりと言った感じです(笑)顔については……そうですね。私もあまり言われたことがありません。普通なんでしょうね、きっと。ただ、私と妹が「ものすごく似ている」という人と、「全然似ていない」という人が半々くらいなのが不思議の種。何を基準に皆ジャッジしているのか。非常に謎です。













まず、超個人的な「西郷どん」視聴敗因。 

私が「翔ぶが如く」を好き過ぎたこと。

 

 

これがとにかく一番まずかった。 

私が「翔ぶ~」を好きじゃなかったら……ぶっちゃけ知らなかったら、ここまで不快に思うことなんてなかった! 

いや、「翔ぶ~」は「翔ぶ~」、「西郷どん」は「西郷どん」と割り切らなきゃならんと、分かってはいたんですが……ちょっと弁明するなら、この「西郷どん」自体が「翔ぶ~」をかなり意識してるんですよ。



キャストをやたらと被せてくる。

サブタイもやたらと被せてくる。

同じような演出もやたらと使う。

台詞をほぼそのまんま引っ張ってきたりする。

 

で、これが上手いオマージュになってればいいんですが、全く上手くいっていない。そもそも……、

 

維新を終えての一言。

西田西郷「もっとたくさん人が死ぬべきだった」

鈴木西郷「たくさん犠牲者出し過ぎた責任取って鹿児島に帰ります」

 

西田西郷「正助どんは謹慎中、親父さんは島流しに遭ってる。そんな時に嫁を取って、俺一人が浮かれるわけにはいかん!」

鈴木西郷「自然は綺麗で、愛する妻もいる、この島は極楽だ。だから、一蔵どんとは帰れない」

ここまで180度違う世界観なんだから、合う訳がないんですよ。

それなのに、強引にねじ込むから何ともちぐはぐな感じになってしまっている上に、そもそも使い方自体おかしかったり、逆に無理矢理「翔ぶ~」とは違うふうに見せようとするあまり変なことになっていたり。 それがもう、鼻についてしかたない。

コンセプトが全然違うんだから、こんなに意識しなきゃよかったのに。

なんでここまで意識したのかホントに謎。

……まあ、なんだかんだ言って「翔ぶ~」は三十年近く前のドラマで、見てない人も多いでしょうからね。私と感じ方はだいぶ違うはず。

 

なので、今回の総括はいつも以上に当てにならないと思います。

それを念頭にお付き合いいただけますと幸いです。

 

 

さて、そんなこんなで今年の総評ですが……

 

総評:歴代糞大河たちから継承した駄目要素のことごとくが、西郷隆盛というテーマと最悪の化学融合を遂げてしまった劇薬。

 

 もうね、これに尽きる。

 

 このドラマは、「天地人」「江」「花燃ゆ」「官兵衛」など、名立たる糞大河たちの駄目要素を、実に色濃く継承しています。

 

・主人公は大正義。主人公と対立する勢力は全員小悪党と、単純化。

・謀略が全く描けない。ただ「成功しました」「勝ちました」という結果のみを映し、皆が絶賛。

・全て主人公の手柄。

・脇役は、主人公と敵対する小悪党or主人公信者のモブ。
・脇役のキャラ立てができず、誰が誰だか最後まで見分けもつかない。

・主人公が現代人&未来人で、当時の人々を上から目線で非難しまくる。

・主人公は戦大嫌いで平和を愛するお花畑野郎。汚れ役は全部他キャラに委託orなかったことに。

・そのくせ、どうしても避けては通れない非道行為を行う際は、唐突にキャラ変。

・「平和のため」「民のため」と言わせておけば何とかなると思ってる。

・幻の味噌汁方式。

・史実そっちのけのオリジナルエピを乱発。

・主人公の半径十メートル以内のことしか描かない。平気で一大イベントを飛ばす。

・政治が感情論で動く。

・恋愛至上主義。

・適当過ぎるBL描写。

・というか、もはや実際の人物とかけ離れまくった別人。

 

まだまだあるけど、ざっと数えてみてもこれだけ継承している。継承するなら、もっと違うものを継承してほしかったよ、くそったれ!

 で、ここまででも相当やばいのですが、これらが西郷隆盛という題材と掛け合わされると、劇薬度が跳ねあがるのです。

 例えば……これはあくまで極論ですが、戦国時代なら、話を単純化することができないこともない。 

領地拡大を狙って攻めてきた悪役・A国をやっつろ! みたいな。

そして基本、攻めてきた相手国と自国を描けば何とか事足りる。

官兵衛なんかがそうですね。非常に簡略化しまくったり、敵対相手を悪役化させたりして……面白くはなかったけれど、話の流れ自体が分からなくなることはなかった。

しかし、幕末となるとそうはいきません。

幕末は、異国が開国を迫って来た。どうするべきか? という問題から始まるので、異国はどうして開国を迫って来たのか。世界における日本の立ち位置は? そして、それに対してどうするべきか。どんな国の形を目指すのか。というそれぞれの考えをはっきりさせておかないことには、対立関係さえ描くことができません。

領地広げたいから。天下取りたいからじゃ駄目なのです。

それなのに、このドラマは官兵衛などと同じように物事を簡略化しようとした上に、主人公に関わることだけ取り上げました。しかも、時間配分はホームドラマばかりに割いているので、描写時間は極極わずか。

 同じ幕末ものの「花燃ゆ」でもこの手法が取られていましたが、主役の美和が一般人なので、まだ(多少ですが)弁解の余地はある。



 でも、政治にがっつり関わった西郷が主役では完全にアウト。

なんで敵対しているのか、そもそもこいつらは何がしたいのかさえも分からないまま、話がどんどん進んでいくことに。

土台は完全にぐちゃぐちゃです。


さらに、「いいこと考えた。ロシアンルーレットで藩主を決めようぜ★」「慶喜を次期将軍にするため、遊郭で慶喜同人誌量産」なんてぶっ飛びネタから、


「遊郭に住んでいる遊び人のヒー様と西郷はマブダチ★」という訳の分からないオリジナル設定などを次々ぶち込んでくるからカオス度を極め……政治描写の酷さはトップクラスなのではないでしょうか。

 

そして、制作陣が特に力を入れて描きたいと言っていた「西郷は日本史上一番のモテ男」っぷり。



これがまずかった。

 

西郷隆盛の魅力って、これまでの歴代主人公たちに比べて非常に分かりづらい。イケメンじゃなかったとか、貧乏だったとか、そういう要因もありますが……なんというか、理屈じゃ説明できないんですよ。

 

例えば、「翔ぶ~」においての、西田西郷のこの台詞。

(援軍を寄越してくれと懇願する伝令に対して):「援軍などなか。皆死せ。おいも死す」



普通に考えたら滅茶苦茶です。でも、皆この言葉に奮い立って「チェスト―――!」と叫んじゃう。かく言う私も、滅茶苦茶だと思いながら、なんか熱く込み上げてくるものがあったりして。



 こういう表現というのはとても難しい。脚本と役者双方の力がないと無理。しかし、西郷の政治理念さえまともに描けていない段階でそれは不可能。

 じゃあ、このドラマはどうしたかと言えば、西郷がモテるのは、穢れを知らない永遠のピュアっこだから。誰にでも優しく親切だから。と、分かりやすく説明できるようにしちゃいました。



で、そういうエピを投入しまくる。ほら! 彼はこんなにピュアだから……優しくて親切だからモテるんですよ! と言わんばかりに。しかし。。。


まずは、ピュアっこ描写。日常生活の些細なことでこういう要素を出すならまだしも、政治場面においてもそれをやられると、、、、


・この書状をこっそり相手方に届けろと言われてんのに、密書がこれ見よがしに懐からはみ出したスタイルで、「水戸藩邸はどこごわすか?」と大声で道を聞きまくる。
・世間には、西郷は死んだことになってるから、偽名を使うことにしたと言ってるのに、「西郷です。今はゆえあって、大島と名乗ってます☆彡」と自己紹介。


無能というか、ただの馬鹿だろこいつ?! としか思えない。国についての話し合いだって「皆なかよく」という小学校のスローガンレベルのことしか言えませんしね。

また、人に親切にする描写については……。

風邪を引いた弟に買ってやる薬代もないから、100両借りる(←?)

  ↓

100両あるから、大量に米を買っておむすびパーティーを開き、熊吉の母ちゃんに米二俵プレゼント!(←???)

 自分もがっつり参戦した禁門の変で焼け出された人たちを見て、「この人たちはこれからどうするんだろう」と、他人事のようなことを言う。

 すぐそばで親を亡くして泣いている子どもがいるのに、犬を救出して歓喜の声を上げる。



 

なんかずれている。



また、困ってる人がいて財布をあげちゃうなんてこともありましたが……これ、西田西郷もやってたんですが、西田西郷の場合、ものすごく悪いことをしてしまったって顔で帰ってくるんですよね。 

で、奥さんにものすごく申し訳なさそうに謝るんです。「可哀想だと思って、ついお前たちの飯を買う金が入った財布を差し出しちゃった。ごめんね」って。 



しかし、こちらの西郷は違います。困ってる人を助けたぞ! と、どや顔で帰ってきて、家族に「自分たちのご飯は?」と怒られても、「あ。ごめんごめん。でも、困ってる人が助かったんだからいいじゃない!」みたいな反応をする。

 他の場合も大体そう。自分の手助けで助かった人ばかりを見、それによって身内が困ってもあんまり気にしない。怒られてようやく「気づかなかった。ごめん」と謝るだけ。



そこが何ともモヤる。逆に独りよがりで情が薄く見えてしまう。

そんな西郷に皆メロメロ!
金貸しは「西郷さんはいい人って聞いてるからv」と喜んで金を貸し、民は「なんか西郷さんはスンバラシイ人って聞いてるから!」と平伏。
仲間たちも、この男が何か偉業をなしたとこなんか見たことないのに、「西郷がいなきゃ駄目だ!」と西郷依存症。

女性にも大人気! 

西郷の三人の妻は言うに及ばず、女装三条公も近所のおばちゃんも、大久保の妻も妾も、慶喜の側室も猫も杓子も皆、特に理由はないけど西郷大好き。

西郷が何しようが賛美し、平気で旦那や主を差し置いて、西郷の味方をします。



遊郭で遊んだ代金を支払っただけで、西郷さまはスンバらしい! と、絶賛したゆうも大概ですが、その傾向が最も顕著に表れていたのが、慶喜の側室のフキ。

確かに、子どもの頃親切にしてくれたけど、結局人買いに売られていくのを阻止できなかったし、遊女してると知ってもそのまんま放置の西郷。

対して、慶喜は遊郭からフキを買い取り、側室にまでしてくれました。

それだというのに、この女はことあるごとに「西郷西郷」。

言い争いになれば必ず西郷の味方をし、情報を流し、挙げ句の果てには「西郷さまに許しを乞え。西郷さまは寛大でスンバラシイお方だから、心から悔い改めれば許してくれる」などとほざく始末。



もうお前、西郷の女になれよ状態。

他の女性陣も大なり小なり似たような感じで、もうモテモテ!

どうです? 西郷さんモテ男でしょう? と言わんばかり。 

しかし、当の西郷はと言うと、これまた反応がうっすい!

勿論優しく接しますし、可哀想な境遇を案じたりもしますが、それだけ。

惚れたり焦がれる描写は皆無で、相手からの好意に気づいてもいません。

意図は分かります。これだけ惚れられまくってる自覚があったら収拾がつきません。

このあたりの構図は龍馬伝を思い出しますね。

とはいえ、龍馬の場合は最終的に結婚するのはお龍だけだし、キープはしても(笑)恋のために全てを投げ出したりはしなかったので、セーフと言えないことはないのですが、今回の西郷は。。。。



 「西郷は共感の人」という意味を拡大解釈したのか何なのか、この西郷は相手の女性が熱烈に懇願してくると、何でもあっさり「うん」と頷いちゃいます。



 

心酔しているはずの斉彬から直々に、江戸行きを命令されていると言うのに、妻が「行かないで」と言えば「うん」と頷き、

将軍との婚礼間近の篤姫が、「私を連れて逃げて」と言えば「うん」と頷き、

「現地妻にして」と、すっぽんぽんになって懇願する愛加那に、「西郷という名を捨て、お前を正式に娶って一生南の島で暮らす!」と言わせ、

でも、「あなたはこの国に必要な人だから」という愛加那の説得により、泣く泣く帰る。

これね。制作陣が現代人的観点&「恋愛結婚できる国を作ってください」なんて台詞が飛び出すほど恋愛至上主義者的観点から見て、西郷を悪者にしないための苦心だと思うんです。

妻を泣かせてまで、単身赴任(江戸行き)を強行する夫なんて最低。妻を気遣って単身赴任を取りやめる夫最高! 

好きでもない人に嫁ぐ篤姫可哀想。その気持ちを慮って、全てを捨ててでも応えてあげようとした西郷、最高! 

後々捨てることになると分かっていながら、手を出して子どもまで作るなんて最低! 不誠実! 全部を捨ててでも愛加那と添い遂げる覚悟を決めた西郷さんは真の男! 素敵!  



仕事(?)のために、一生を添い遂げるという約束を破って妻子を捨てるなんて最低! 不誠実! でも、日本が西郷を必要としているからしかたなく……それに愛加那も許してくれてるし、行っていいって言ってる。だから西郷は全然悪くない。みたいな。

 

でも、これだと結局色恋のためなら主君も国も捨てられる男になってしまっているし……かといって、愛加那に帰れと言われたからと、あっさり帰っちゃったりして。 
篤姫の件もそう。駆け落ち寸前までいったくせに……「篤姫との愛の力が無血開城に導く!」とか言ってたくせに、再会しても……駆け落ち騒動なんてなかった。いいね? 状態。

西郷を不誠実に見せないようにするつもりが、結局全方位に不誠実でいい加減な感じになっちゃってるってのが何とも。。。

 で、こういうことは恋愛方面に限らず、色んなところで頻発します。



 子どもを引き取ったばかりなのに、その子を置いて上京するなんて最低! と、思ったのか、「菊次郎ちゃんが寂しがるから、上京は取りやめて」という糸の言葉にあっさり頷かせ、菊次郎が大丈夫。言っていいよと言ったから再び上京を決意! とかね。
とにかく、製作者側が嫌だなと思う西郷の決断は、ことごとく「周囲に言われたから」で、西郷自身には決めさせない。



 

けど、これって結局西郷自身の決断を全否定してってるだけなんですよね。

そして残ったのは、確固たる意志がなく、人に言われるままに頷くだけの駄目男に……いや。



人の意見をまるで聞かず、猪突猛進したこともありました。慶喜の件です。 

「御所にブッパした危険な長州の息の根を止める!」と、慶喜が言ったら、「民を泣かせる戦をまたやるなんて最低! 戦して慶喜をぶっ潰せ!」とか言い出し、 

「慶喜は異国に薩摩を売り渡そうとしている」というたった二人からのタレコミを、ろくに調べもせずに信じ込み、 

「いくら何でもそんなことはないんじゃないの?」という周囲の言葉に耳を貸さず、


「俺は慶喜のこと誰よりも知ってるから分かる!!! 慶喜を殺さなきゃ日本の未来がない! たとえ日本中火の海にしてでも売国奴慶喜殺す!!!」と、江戸に放火して戦を引き起こし、慶喜を追い回す、なかなかのヤンデレっぷりを発揮。

そのくせ、慶喜が売国奴だったのは勘違いだと分かるや否や、

「そうか。お前は俺とマブダチだった頃のままのヒー様だったんだな! じゃあ許してやるよ!」

という、謎の上から目線で慶喜を許してやるというサイコパスっぷり。

 

ようやく出した自我がこれとはどういうことなのか……というより、単なる勘違いで鳥羽伏見、戊辰戦争が起こって、八千人も死んだ。そっちのほうが恐ろしいわ!

 ……と、こんな感じで、西郷のモテ男造形もアウト。

 では、このドラマが最後に猛烈アピールした「このドラマは西郷と大久保の友情物語でした!」はどうでしょう?



二人の友情物語がメインテーマと言うなら、最初からじっくり二人の絆を描いていなければならないのですが。。。 

まず、このドラマがやったこと。

・二人の家を隣同士にした。

・大久保、三つも年上の西郷にタメ口をきく。

 家が近いほうが……タメ口で言い合えるほうが、より親密に見えるはず★とでも思ったのでしょうか。でも、これってかなり悪手だったように思います。

特に、三つも年下の大久保が西郷に対して上から目線のタメ口きくってのが、鹿賀大久保の弟分属性に萌えまくった私にはどうにも受けつけず……いや。糸だって同世代の幼馴染設定にしてしまったんですから、この大久保も西郷と同い年なんでしょう。

その割には吉之助さあ一蔵どんって言い合ってるけど……まあもうとにかく同い年ということにしてしまったということにとして! 



序盤。大久保の蟄居エピはフルに活用すべきでした。

父親は島流し。自分は蟄居中。家族は女ばかりで男は自分一人。一体どうしたらいいのだという、可愛く三角座りするほど落ち込む大久保の窮状を描き、そんな大久保を気遣い、せっせと世話を焼き叱咤激励する西郷。

これだけで、二人の友情を色濃く描写できたはず。

 それなのに、このドラマはここに「糸」という要素をぶち込んできました

 愛しの西郷に近づくため、西郷ん家の隣の家に住んでる大久保の許に通い詰め、せっせと世話を焼くことでいい女アピールをする糸(ここで、二人の家が隣同士設定を利用!)

 そんな糸にまんまと惚れて、窮状にも関わらず鼻の下を伸ばし、西郷が来たら居留守を使うが、糸がいると分かった途端飛んで出て来る大久保。

 「糸どんは、吉之助さあにラブしちょっとじゃろ?」なんて、とんでも台詞を言ったりして糸と温いラブコメを演じる大久保。

女のことで殴り合いの喧嘩をする西郷と大久保……と、大体糸を中心に物事が進んでいく

せっかく西郷が大久保のためにと相撲大会に出ようが、気がついたら「ラブ」に話がすり替わってますし。 

糸がいなくなってからは、大体喧嘩ばかりです。

やれ、「女房が言うから江戸行きやめるだ? なんだよ、そのくそ女房!」「ああ? 人の女房になんてことを! ふざけんな!」と喧嘩。

やれ、「お前は俺のことを下に見てる。もう二度と目の前に現れないで><」と喧嘩。


何と言うか、お互い相手に対して思いやりがないんですよ。


西郷の女房のことをあしざまに言ったり、西郷からの好意を「俺のこと見下してる!」とぎゃんぎゃんかみつたり、
西郷の再婚について「仕事忙しいからどうでもいい」な大久保も大久保なら、


江戸の情勢なんて西郷が教えてやらなきゃ分かるわけないのに、そういうことは一切教えず、後から「江戸のこと何も分かってないお前は糞」と言ったり、
月照さんのことを大久保に丸投げしたり、命を助けてくれた大久保に「どうして助けたんだ、糞が」と罵り、

そのことを謝りもせず「愛加那たんのために鉄製の機械送ってください」とか言い出し、「今、あなたを本土に戻す根回しで忙しくて無理です」と返事がくれば、「難しいから無理なんだってよ、くそ」とかほざく西郷も西郷。


どこが仲いいんだよ、こいつら。

 

非常に美味しい「俺が必ず、お前を薩摩に連れ戻してみせる!」エピも、西郷が愛加那に現を抜かし、わざわざ迎えにきた大久保を「ここは極楽だから帰らない」と追い返して台無しに。

男の友情なんざ、「ラブ」に比べりゃ鼻糞だとでも言いたいのでしょうか。

西郷が戻って来てからも、「何だよ、さっきの三郎への態度。俺の立場も考えてくれよ!」「うるせえ! 俺はやりたいようにやるだけだ!」と喧嘩喧嘩。

おまけに、二人三脚でやってる感じがない(西郷ばかりに焦点が当てられ、大久保の活躍が軒並みカットされてるわ。二人で話し合うシーンもないわ)上に、

西郷の頭の中は慶喜を血祭りにあげることで頭がいっぱいで意思疎通もできていない……と、何かにつけて「ラブ」や別分子に汚染される。

この状態で、時々「俺は何があってもお前の味方だ!」なんだとやられても、口先だけの薄ッぺらい茶番にしか見えない(このあたりの白々しさは「天地人」に通じますね)



 明治編になってからは、政治的背景が描けないから酷さが加速。

幕末編、あれだけ大久保をないがしろにしていたというのに、西郷の行動すべてを「大久保は友だちだから」で片づけちゃったんですよ。


大久保は友だちだから、新政府に入ってあげる。

大久保は友だちだから、味方してあげる。

友だちの大久保が「お前邪魔」って言うから、政府を去ります。

友だちの大久保に逢いにいきたいから決起します。


で、「僕が邪魔だったって? ひどい! どうして><」と号泣したり、「シサツメールなんてひどい! どうして><」と号泣したり、「僕を反乱軍とみなすなんてひどい! どうして><」と号泣して、西南戦争を引き起こす。

全部感情論。恐ろしいほどに、「国のため」どうこうがずっぽり抜けてる。



 

対する大久保。

西郷大正義の掟を守るためか、尺がないのか何なのか。二話くらい前まで、「西郷さえいれば他は誰もいらない」と叫ぶ、重度の西郷依存患者だったのに、洋行から帰って来た途端、独裁者へと闇堕ち。

西郷を嵌め、「お前邪魔」と言って西郷を追放。(このドラマの中では)西郷たちに対して嫌がらせのような政策ばかりを取り、ついには密偵に暗殺を指示。

それなのに、西郷が決起したと聞いた途端、「ウソダドンドコドーン!」と絶叫……が! すぐに気を取り直し、ソッコーで西郷追討の勅使をもらう。

で、西郷が死んだと聞いて、「吉之助さああああ」と号泣。



 意味が分かりません(直球)

 自分が信じる道のために、心で泣きつつ友を切り捨てた。そう言いたいんだと思いますが……これはこのドラマ全体に言えることですが、このドラマはとにかく「葛藤描写」がない。



迷う描写をほとんど入れず、ぽんっとやって、後で泣いたり苦痛の表情を浮かべるシーンをワンカットだけ入れる。 

これ、普通は逆なんですよね。

感情としてはやりたくないが、状況や自分に与えられた責務など考えるとやらざるを得ない。でも……! と、散々悩んだ上に決意! という描写をしっかりやるほうが、その行為をしなければならない必然性や、切り捨てなければならない相手への深い想いが表現できるから。

しかし、その描写がこの大久保にはない。その上、大久保が西郷を排除しなければならなかった理由提示もなければ、この時期の演技が「私は憎たらしい悪役です」と言わんばかりなので、ノリノリでやってるようにしか見えないわで、いきなり「吉之助さああ」と泣かれてもついていけない。 

まあ、これも結局政治描写が描けない弊害ゆえのことでしょう。

二人の決裂には、政治的事情が切っても切れないのに、それを無理矢理排除しちゃったから、こんな訳の分からないことに。 

ということで、大久保との友情描写もものの見事に破綻。 

さて、ここまでつらつら語って来て、結局このドラマ。西郷隆盛の何を描いたのかって話ですが、何一つ描けなかったのではないでしょうか。 

だってこれ、西郷隆盛を気持ち悪いほどマンセーしているようで、実は全否定してる話ですもん。



西郷の信念や憂国の想い。大久保との友情。そういうものは口先だけの上っ面のみ。

あとは、適当に年表をなぞりつつ、自分たちの現代的価値観&恋愛至上主義で塗り固めただけ。



こんなことなら最初から、「西郷隆盛」なんて題材選ばなきゃいいのに。

ということで、これが私の、このドラマの総評です。

ここまでお付き合いいただいてありがとうございました。

 


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無題

今日 久しぶりに見た翔ぶが如くのCS再放送 最終回でした。ファンとして 当時、どのくらい原作に近いドラマ化かという視点で見てましたが 司馬さんも大河の中でいちばん満足していたとなにかで読みました。
改めて 当時にはまだ分からなかった その内容の濃さ、深み、キャストの演技に 自分大河ランキングを改めた次第です。いい大河ですねぇ。
西田敏行さんすみません、私的キャスティングでちょっと鈴木版贔屓コメントしましたが、あなたが西郷です。
自分的瑕疵を言うなら ちょっと音楽が暗すぎる…かな?どう思われますか。
西郷どんがおっそろしく引き立て役を務めたのは…まあご愛嬌です。
これからも 毎年 大河を今年こそはと期待したいと 改めて壱号さんのブログを読んで思いました。
明智光秀を待ちましょう!
  • ちこちこ さん |
  • 2019/01/30 (19:50) |
  • Edit |
  • 返信

コメントありがとうございます!

ちこちこ様

コメントいただきまして、ありがとうございます!
翔ぶが如く、CSで再放送していたんですね! 「西郷どん」に合わせてなんて……N〇Kは「西郷どん」を背後から撃ち殺そうとしているとしか思えないw

脚本は言うに及ばず、キャストも……鈴木さん、頑張っていたと思うし、脚本に滅茶苦茶足を引っ張られていたってことは重々承知しているのですが、やはり私の中で、西郷と言ったら西田さんです。
にじみ出るカリスマ性、ふと見せる愛嬌は勿論のこと、何と言ってもあの目力! 「両雄対決」回で、大久保さんと激論を交わすシーンのあの眼光は何度見ても身震いしてしまいます。
なので今回、西田西郷の良さに気づいていただいて嬉しい限りです!

とはいえ、翔ぶ~にも気に入らない箇所はあって……私は、音楽はそこまで気にならないんですが(確かに、翔ぶ~には底抜けに明るいBGMないですよねw)第二部の矢崎&千絵パートがねえ。あそこだけはどうにもこうにも(苦笑)

また、翔ぶ~のような名作大河が生み出されてほしいと願ってやみませんが……来年どうなるでしょうね? 不安もありますが、期待して待ちたいと思います!
  • 雨月 さん |
  • 2019/02/02 (11:22) |
  • Edit |
  • 返信

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