忍者ブログ

壱号ブログ

雨月のブログです。BLサイト「イチゴウニゴウ。」運営中。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「八重の桜」総評

「次回大河の主役は新島八重です!」と聞いた時、本気で誰それ??? 状態だった、親しみも何もなかった主人公。

おまけに、女主人公にもいい加減うんざりしていたので、「うげぇ、また江みたいな感じにするの? マジ勘弁」と思ったり……とにかく、あまり期待していませんでした。

とはいえ、脚本が私の好きな「ゲゲゲの女房」の人だったので、もしかしたらという淡い期待を込めて視聴したわけですが……




全体的な感想はどう? と言われると、返答に困ります。
なにせこの話、前半(幕末パート)と後半(明治パート)で全くの別物だからです。

時代の移り変わりや舞台が会津から京都に移ったってのもありますが、前半は会津魂、そして武士の苦悩&美学を全面に押し出していたけど、後半は宣教師・新島襄の登場により、キリスト教……博愛精神押しでしたからね(おまけに、脚本家さんまで変わった)カラーが全然違う。

なので、前半後半それぞれで感想を述べますと……


<前半(幕末パート)>

・主人公だからと、八重を変に出張らせなかった。
主人公があまりにも登場(&活躍)しないので、誰が主人公なんだか分からないという批判があったようですが、一介の中級武士の家の娘である八重が政治の世界で活躍するのは不自然な上に、うっとうしいだけですからね。あれでよかったと思います。
それに、身の丈にあったところから世界を見て物事を考えていたし(先のこと知ってて発言してる未来人主人公じゃなかった)、目上の人をちゃんと敬っていたし、自分のできる範囲でコツコツと努力を重ねる姿にも好印象でした。
(ただ、最後まで老けメイクをしなかったのがね……うん)

・政治描写、時代の流れもちゃんと描いていた。
心理描写ばかりに焦点を置きすぎるあまり、政治描写が疎かになっていた最近の大河の中では群を抜いてしっかりしていて、とても見応えがありました。
薩長はじめ、幕府や朝廷の思惑をしっかり描くことで、時代の流れがちゃんと見えましたし、手段を選ばず時流に乗って突き進む面々の手管は面白かったし(特に、二心殿は秀逸)信念を貫き過ぎるあまり時流に乗れず、取り残され、追い込まれていく会津が際だち、とても痛々しかった。
(特に京都落ちしてから会津滅亡までの描き方はすごかったですね。毎週鬱回。けれど、二本松少年隊で本当に少年を使ったところなどに、できるだけ史実通りに描いていこうというスタッフの気迫が見えて、真摯にこの題材に向き合ってるんだなぁとしみじみ思ったものです)

あと、会津を善、薩長は悪みたいな描き方にしなかったのもよかった。
特に、会津戦争にて、二本松少年隊の少年に斬りつけられながら「子どもだ! 斬るな!」と叫んだ薩長のモブ隊長はいまだに忘れられません。あとでちょっと調べてみると、モブ隊長……白井さんというのだそうですが、彼を斬りつけて殺された少年の父親は、少年の墓参りにいくと必ずこの白井さんの墓にも参っていたそうで(白井さんのお墓は会津にある)
こういう人を少しでも登場させたのは、とてもよかったと思います。

やり方や立場は違えど、皆日本のことを思っていた。確かに会津は人として正しいことをしたけれど、上に立つ者としては間違っていた……と、公正な描き方が好感触でした。

・俳優陣が大健闘
八重さんや照姫様など女性陣もよかったですが、男性陣がとにかくよかった。
着物の立ち居姿、武者姿が非常に似合っていたのは勿論のこと、演技もよかった。どんな境遇にあろうと愚直に突き進む兄ちゃん、優男な見た目とは裏腹にしっかり芯の通った強い男・尚さん、滲み出てくる心の清らかさが痛々しいほど麗しかった容保様、浮世離れした品格がありながら、非常に温かい眼差しだった帝、言うことコロコロ変えて裏切りまくるのに、何か恨めなかった二心殿……などなど、それぞれキャラがとても魅力的で毎週ときめいておりました。

・武士をちゃんと描いていた
最近、武士らしい武士にお目にかかっていなかっただけに(「平清盛」は武士よりも私怨が強かった)これが一番、好感が持てた点です。
「戦=悪」、「戦を起こす者=愚か、私利私欲の悪党」、「イクサハイヤデゴザイマスゥ」、「アラソイゴトハスカンキニ」という安っぽい反戦主義を謳うことなく、国のため、主のために戦って死ぬのは誉れという彼らの理論、武士にとって帝は生神様であるという信仰(?)、会津戦争で負けた後、城を明け渡す際に城を綺麗に掃除した気構えなど、丁寧に描かれていたことが、武士が好きな私には好感度大でした。

……ということで、前半は概ね満足です。
贅沢を言うなら、容保様主役でがっつりじっくり京都編を描いてほしかったなと思ったりもするけど、まぁ……八重さんのキャラはよかったし、ずーっと、かく場で銃の改良続ける地味なシーンが続いてからの、銃ぶっ放して大暴れの展開はカタルシスがあったから、いいと思うことにしよう。


<後半(明治パート)>

で、後半なわけですが……正直に申し上げますと、私は後半駄目でした。
この話の趣旨を変えたジョーは好きだし、いいシーンもちらほらあるんですけどね。でも……いくつか、理由を挙げるとすると、

・エピのスケールが小さい
あんなに丁寧に描いていた政治パートはほとんどなりを潜め、取り上げられるのは困った転校生だの学級崩壊だの。。
前半の、時代を変えよう! 日本中敵に回しても、自分たちの誇りを貫いてやる! という壮大なエピに比べてエピが小さ過ぎる。
(一応政治方面で対立する相手として槇村さんを出してはいましたが、二心殿のキレッぷりに比べると月とすっぽんな上に、どういうキャラにしたいのかも全く分からん意味不明キャラになってたしなぁ。。)
おまけに、一話完結にしなければならないノルマでもあるのか、事件が起きても、その回のうちにあっさり解決してしまうものだから、やっつけ感が半端なかった。

・魅力的な人物欠如
エピが小さくても、キャラが魅力的なら気にならなかったのでしょうが、明治以降、出てくる奴皆、好きになれなくて困りました。
「僕たちには他に行くとこないんです。入学させてください」と泣きついてきたくせに、無理を押して受け入れたジョーたちに感謝するどころか「ここの授業は低レベル過ぎて駄目だ」何だと文句言って授業ボイコットする熊本バンドとか、
「浮気女の娘」と陰口叩かれてるのに、堂々と公衆の面前で男といちゃついたり、彼からもらったラブレターを皆の前で読み上げたり、「東京で、彼の小説で食ってくから学校辞める!」とか言い出す考えなしな……おまけに、「おば様、本でも読んで母性の勉強をなさったら?」なんて可愛さの欠片もない久栄とか……
が、それだけ好き勝手反抗しておきながら、その回の最後にはコロッと改心して、「八重先生(おばさま)ごめんなさい。ありがとう」になってるから、余計にもやっとして。。。
まぁ、もうとにかく明治以降に出てくるキャラの大半は苛つくばかりで、共感も好意も抱けませんでした(ジョーとジョーの両親は別)

・博愛主義押しに最後まで馴染めず
これが、後半パートが好きになれなかった最大の理由です。
そもそも、キラキラお花畑のような綺麗事にはいい加減うんざりしていました。
「皆相手のことを思いやれば、戦なんて起こらないわv」とかね。馬鹿なこと言ってンじゃねぇよ、偽善者ども! とここ数年悪態を吐きまくっていた私にとって、「味方も敵も愛しましょう」だの「愛を持って人々に接しましょう」なんていう博愛主義は、非常に耳障りの悪いものでした。
とはいえ、会津戦争を経て、憎しみや偏見を捨てて物事に向き合いたいと思っていた主人公にとって、キリスト教の教えは有効であることは理解していたので、「薩長憎し」の主人公が隣人愛に目覚めるまでの過程に納得できれば、受け入れられたと思うんです。

しかし、↑でも書いてあるとおり、後半パートはとにかく一つ一つのエピソードの扱いが軽く、皆あっという間に改心してしまうため、共感できない。
おまけに隣人愛精神は下手に描くと、前半の武士道精神を否定するものになってしまうから、前半の武士道精神に感銘を覚えた私には、非常に不快なものに映ってしまいました。

その最もたる回が、会津戦争で父親を亡くした女生徒が入学してきた回ですね。

武士が戦で死ぬのは誉れなのに十年も恨みに思う武家の娘に??? だし、会津戦争でどれだけ会津人が悲惨な目にあってたかも知らないで、「よくパパを殺したわね!」と糾弾してくる薩摩人とかどうなのよ? ……と、この女生徒のキャラ設定自体色々首を傾げるものでしたが、そんな相手に速攻で土下座して「申し訳ありませんでした」と謝った八重さんには愕然としました。

後で、八重さんは父親たちを殺された恨みから参戦し、殺してしまったから……と言っていましたが、いや……それだけではなかったでしょう?
会津を守りたい。お殿様に恩返ししたい。会津の名誉を復活させたい。そういう武士道精神があったはずでしょう?
それに、そもそも戦場で出逢っているなら、この人の父親も八重さんを殺しに来てるわけで、殺さなきゃ殺されていたわけで。

また、これはあとで調べて知ったことですが、どうも本来の八重さんは薩摩人に対してわだかまりが拭えず、家でパーティーを開いても、薩摩の人は呼ばなかったとか、晩年、元熊本バンドのメンバーたちが運営する同志社と折り合いが悪くなって、疎遠になったとか、色々あったようです。
そういう、八重さんの拭いきれない心の傷にも、しっかり焦点を当ててほしかったなぁ。
マジ天使な旦那を持ち、自らもキリスト教に帰依したけれど、どうしても捨てられないわだかまり……それを描いてこそ、新島八重さんという人物を描いた意味があったのでは? と思えてしまって。

しかしまぁ……とにもかくにもここで、このドラマは前半丹念に描いてきた武士の世界のありよう、武士道精神を全否定し、江と同じお花畑に旅立ってしまいました。
そしてその後に続く、ぬる~いエピの数々。

青木君だけを悪者にして、さらっと綺麗綺麗に描いた、時栄さん追い出し騒動(時栄さんの演技はよかったんですけどね)
「ならぬものはならぬのだ」と鉄砲撃ちの厳しさを教え込み、「一度やり始めたのなら、引くことは許さない」精神を徹底させた前半などなかったように、「東京行きたい! 彼の小説で食ってく! 学校辞める!」だなんてお花畑全開なこという姪っ子をあっさり許して、「頑張ってねv」…などなど。

いくら相手のありのあままを受け入れて慈しむべきだとしても、どうなのよ、これ。

正しい人の道が時として破滅の道となってしまう皮肉を容赦なく描き、己の主義主張を唱えることは常に命がけ、またそれを覚悟して日々を生きていた幕末描写が好き過ぎただけに、悪くはないんだけどなんかもやもやイライラ。。。。

……というのが、私の率直な感想です。
前半は良かったんだけど……あんな感じで最後までいってほしかったな。
とはいえ、地に足のついた堅実な描き方や、新しい視点から幕末を見るという試みはとても好感が持てましたし、最近にはないほど爽やかな気持ちで完走し終えることができました。


来年はどうなるか。。。
大好きな戦国時代だから、期待せずにはいられないけれど……ゾクゾクするような知略戦、キレッぷり待ってます!!!

拍手

PR
  

COMMENT

NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 

おじゃまします

毎週(西郷どんで)お世話になっているポンタです <(_ _)>

今CSで八重の桜をやっていて、雨月さまが当時どう評価していたのか気になって、過去記事の方にもおじゃましてしまいました。


八重~はオンタイムでも見ていましたが、今、改めて見てみると、前半は本当に真摯に作っていたんですね。

特に今の大河と比べると、そのすばらしさがよくわかります。

「八重~」は、会津の悲劇を描きながらも、決して会津=正義・善、薩長=悪のような単純な位置づけはしていなくて、この記事にもあるように、敵方の子供をかばって殺されてしまう長州の隊長さんや、捕虜になった神保雪に優しい言葉をかけて脇差を貸してあげた土佐藩士、そしてなによりも、私利私欲からではなく、自分たちの理想とする未来のために清濁あわせ呑む覚悟を感じさせる強大な敵・西郷隆盛(← 「西郷どん」より10000倍賢そう)等々、会津と対立する側の人々も一切貶めることなく、ステキな人物として登場させているのに。

噂では「西郷どん」は、征韓論なしの下野になると聞きましたが、そこまで史実を無視して歴史ドラマを作る意味があるんでしょうか?

西郷をお綺麗に描こうとするあまり、逆にディスっているようにしか見えないのですが。


  • ポンタ さん |
  • 2018/10/24 (11:05) |
  • Edit |
  • 返信

コメントありがとうございます!

>ポンタ 様

「八重の桜」感想にもコメントいただきましてありがとうございます。
おっしゃるとおり、「八重の桜」幕末編では、各藩を単純な善悪で分けていないんですよね。

皆、私利私欲からではなく、純粋に国を憂い、守ろうとしていた。
ただ、立場や考え方の違いから、目指し方がそれぞれ違っていただけ。

その大前提がないと、幕末ものは成立しないと思っています。
このドラマはそれをしっかり守った上で物語を描いているから面白いのだと思います(それぞれの人物への敬意も見えますしね)

というか、敵対勢力が強大で魅力的であるほうが面白いというのは、幕末ものに限った話ではないんですけどね。
どうして最近の大河は、単純に主人公絶対正義、敵対勢力をケチな小悪党という図式に落とし込んでしまうのか。

西郷をお綺麗に描こうとするあまり、逆にdisってるってのもおっしゃるとおり。
「愛加那たちを捨てて本土に戻るのはひどい」「引き取ったばかりの菊次郎を置いて上京するなんてひどい」と判断したから、相手に言わせて本人に決断させていないわけで……こういう現代人思考での、歴史上の人物dis。嫌になります。

そして……

>噂では「西郷どん」は、征韓論なしの下野になると聞きましたが、

マジですかっ?! もしそうなら……なんで西郷隆盛という題材を選んだのか本気で分からないですね><
  • 雨月 さん |
  • 2018/10/26 (18:01) |
  • Edit |
  • 返信

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

フリーエリア

最新トラックバック

プロフィール

HN:
雨月
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

カウンター

アクセス解析

Copyright ©  -- 壱号ブログ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / material by DragonArtz Desighns / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]